専門医によるリウマチ治療

初期症状、発症予防、早期治療
薬剤副作用、感染症予防、MTX、生物学的製剤ほか

東京リウマチクリニック院長 天本 藤緒

FAQ

質問

リウマチ専門医にずっと通院していますが、じわじわと変形が進んでいるようです。CRPが低い(0.5以下)ので、先生からは良くなってよかったねと言われている。しかし、自分としてはまだかなり痛みがあり生活に支障が大きい。

血液検査の数字が低いので、あなたはこれだけ良くなれば十分だと言われてしまい、それ以上の治療をしてもらえないのですが。

答え

旧来のリウマチの治療レベルではCRPが0.5以下であれば上出来という感覚があり、いまだにそれで満足してしまうケースも多いようです。

私たちは痛み・腫れをほぼゼロにすること(すなわち臨床的寛解)がリウマチ医としての使命と考えています。

CRPが正常範囲でも炎症性の痛みや腫れが続く限り、治療が不十分だと考えます。

実際、CRPが正常範囲でもMTXや生物学的製剤を投与または増量することで、さらによくなったケースはいくらでもみられます。

逆に、数字がひどく高い割にあまり痛がらない人なども、ときにみられます。

血液データはあくまでも目安に過ぎないことを忘れてはいけません。

質問

MTX(=メトトレキサート、リウマトレックスなど)が効いてはいるが、まだ痛み・腫れが残っており、年々、少しずつ変形が進んでいるようだ。

答え

ごく軽症のリウマチを除いて、MTX8mg(1週間にリウマトレックス4カプセル)以下の量で、寛解を達成することは難しいというのが、われわれの得た結論です。

私たちの投与経験(数千名)からいうと、日本人でもおよそ40-50%の患者さんは10mg以上のMTXを必要とします。

質問

少しでも良くなりたいので、生物学的製剤(エタネルセプト・インフリキシマブ・アダリムマブ・トシリズマブなどの最新の注射薬)を使ってみたいと主治医の先生に相談してみたところ、あなたにはまだ必要がないと言われてしまい、使ってもらえないのですが。

答え

日本で保険適応になったのは、インフリキシマブ-2003年(米国1999年)で、エタネルセプト2005年(米国1998年)です。欧米では日本に先立って既に、4-7年間広く使用されてきました。

本院の医師も、長年バイオ製剤(生物学的製剤)を使用してきた結果、使えば使うほど、副作用も少なく、よく効く薬だという実感を深めました。

現在では特別な治療ではなくリウマチ治療の標準薬といってもいいでしょう。

私たちは合計2500名以上のかたにこれら生物製剤を投与してきました。医師・看護師は十分な経験と知識を持っていると思います。感染症予防も徹底しておこなっています。

バイオ製剤については、どんな患者さんがどんな反応を示すのか、どんな人に効きやすいのか、患者さんが教えてくれるさまざまな変化、反応、副作用(かゆみ程度の軽いものから重篤な肺炎まで)を毎日のように経験しています。

その結果、現在ではこれらの薬のいろいろな癖を知り、使用法に習熟すると同時にどのような使用法が危険かも熟知しています。

これらの薬剤を投与する敷居は以前よりかなり低くなっています。

世界中のリウマチ治療のトレンドも同様です。

私たちの診るリウマチ患者さんには全員に良くなってもらいたいという思いからです。

一方、問題点はお薬代が高いということです。

日本の場合、リウマチは保険診療ですから、薬剤費の7割が公的保険で支払われます。

つまりは、国民の税金で支払われるのと同じことですから、安易な投与は慎まなければなりません。

質問

MTX(=メトトレキサート、リウマトレックス)を飲み始めましたが、飲んだ初日に気持ち悪くなってもどしそうになりました。強い薬と聞いていたので怖くなり止めてしまいました。

先生に相談してみたところ、あなたには合わないようだと言われ、中止することになりました。代わりに副作用の少ない軽めの薬を使っていますが、その後リウマチはどんどん悪化しているようです。

MTX(=メトトレキサート、リウマトレックスなど)を使い始めたところ、4週間後の血液検査で肝機能の数字が上がっていると言われ中止しました。やはりリウマチは悪化しています。

答え

MTXを使うときは、最初から必ず葉酸を併用することを強く推奨しています。

葉酸というビタミンは健康な人でも欠乏状態にあることが多く、そこに、MTXが投与されると高率に胃腸障害・肝機能障害が起きてきます。

一度、気持ち悪くなってしまうと、患者さんはやっぱり強い薬なのだという強い恐怖感をもってしまい、それきり止めてしまうことも多くなります。

MTXは他の飲み薬とくらべてダントツに効果の高い薬です。MTXを使うことをあきらめてしまうと、リウマチが治るチャンスを奪ってしまうことになりかねません。

本院では、MTX開始前にもあらかじめ葉酸を投与します。

質問

MTXを使っていてよく効いていたのだが、空咳が続くので、胸のレントゲンを撮ってみた。異常はなかったが間質性肺炎の危険があるということで中止になってしまった。

答え

MTXの副作用はいろいろありますが、これを説明するキーワードは粘膜障害です。

胃腸障害、口内炎、口唇炎、腟粘膜からの出血など多くの副作用はこれで説明がつきます。

のど(咽頭や喉頭)も御多分に漏れず表面は粘膜ですから、ものが飲み込みにくいとか、いがいがする、空咳などの訴えは終始みられます。

すぐに、肺炎かと大慌てせずに、胸のレントゲンや血液検査から肺炎の可能性が低ければ、葉酸を投与していなければ追加、また症状がひどくなければ対症療法で経過をみるべきです。

質問

手のこわばりと軽いむくみがあり、調べてみたところ抗CCP抗体が高かった。早期治療が重要だといわれ、弱めの抗リウマチ剤を毎日1錠飲んでいる。3カ月たつが、効いた感じはなく痛みが続いています。

答え

少数の例外を除き、抗CCP抗体やリウマチ因子の高いリウマチではMTXを第一選択薬とすることが世界的な標準治療になっています。

質問

リウマチの発症を防ぐ方法は何かあるのでしょうか?

答え

発症の原因の40-50%が遺伝子でプログラムされており、ウイルス感染やストレスなどの環境因子は発症のきっかけになるのに過ぎないというのが定説で、今まで、発症を防ぐ方法はないとされていました。

しかし、最近になり、くすりで発症予防ができる有力な証拠が発表されました。

オランダ、ライデン大学のH.Dongenらの画期的な臨床研究により、ほんとうに症状がではじめの段階で、MTXをがっちり投与してしまえば小さいうちに病気の火を消して高率にリウマチの発症を抑えることが可能なことが明らかになったのです。→研究の要約はここをクリック

ただし、この早期MTX投与は軽いリウマチっぽい症状のあるひと全員に行うわけではありません。

本当のリウマチに進行する見込みの高い人を判別して投与する必要があるのです。

今まではこれを判別する良い方法がありませんでした。

実は放っておいても自然に良くなってしまうような人や、変形が進むような本当のリウマチには進まない人にまで、余計な治療を与えてしまう恐れがあったため、なかなか本当の早期治療に踏み切るのには難しい面があったわけです。

今までのリウマチ因子検査よりはるかに鋭敏に、正確にリウマチの発症を予測できる血液検査が抗CCP抗体という検査です。

現在は、保険がきいて700円程度(3割負担の場合)でできるようになりました。

まだ調べていない方は是非調べてみることをおすすめします。もし、CCP抗体が陽性であれば、診断基準をみたさなくても、まだリウマチの症状が軽いうちに、MTXを開始しはやめに病気の火を消してしまうのが、現在の私たち、東京リウマチクリニックの方針になっています。

日本では残念ながら抗CCP抗体陽性と出ても、“まだ診断基準を満たさない。”などの理由で「もっと悪くなるまで待ってください」と言われることが多いのです。

そのうえ、この研究で使われているMTXの投与量は、開始量が15mg/週 最大30mg/週まで増量というものですから、本院のように10mg~28mgのMTXを常時使用し、その使用に習熟している医師でなければ日本で実行するのはまだ難しいと思われます。

質問

リウマチの症状が落ち着いても、薬はいつも4週間分しか出してもらえない。

ずっと落ち着いてあまり変化はないのに血液検査も毎月あるのですが。

答え

本院では、完治という第1目標についで「寛解」といって、通院は必要なものの、リウマチの患者さんがまったく健康な人とほとんど変わりのない生活が送れることを、第2の目標にしています。

薬剤の副作用や合併症を安全に管理できて、負担にならない通院頻度の標準は、リウマチ安定期の場合、通院は1~3カ月に1回、採血は2~4カ月に1回というところです。

途中で風邪症状などの訴えがあった場合には、適宜追加します。

患者さんが薬の性質などをよく理解しているので、まったく事故などなく来ています。

他院に比べて、倍以上のMTX量を処方しながらもこういうことが可能なのです。

本院では、患者さんの苦痛を最小限にすることを最優先にしています。

なんといっても血液検査は痛いですから!私自身、痛いことが大嫌いなので、人にだけ痛い思いをさせるのは胸が痛みます。

質問

仕事が忙しく、度々通院するのは負担です。適正な通院間隔はどのくらいなのでしょうか?

答え

薬剤の副作用や合併症を安全に管理できて、負担にならない通院頻度の標準は、リウマチ安定期の場合、通院は1~3カ月に1回、採血は2~4カ月に1回というところです。

途中で風邪症状などの訴えがあった場合には、こじらせて肺炎になるのが怖いので、遠慮なく早めに受診してもらいます。

質問

MTX(リウマトレックスとメトトレキサート)の違いは何ですか?

答え

リウマトレックスはカプセルなので、錠剤のメトトレキサートに比べて人によっては、胃腸で吸収される割合が悪くなり、その分、効果が悪くなるケースが時に見られます。

そのため、本院では、ほとんどの患者さんで錠剤のメトトレキサートに統一しています。

また一方で、メトトレキサートだと胃腸障害がでやすいので、リウマトレックスを希望される患者さんもたまにいらっしゃいます。

●MTXの比較

薬代は、ジェネリックのメソトレキセートのほうがやや安価になっています。

昔からある抗がん剤の錠剤:メトトレキサート(一錠2.5mgになる以外は同じもの。まぎわらしいですね。)ですと、薬価がぐっと安くなります。

本当はこちらを使用したいのですが、日本の場合、保険診療のルールで残念ながら使用できません。

MTXの種類 製薬会社 形状 腸管の吸収 1錠あたり含有量
1錠あたり薬価
メソトレキセート ファイザー 錠剤 吸収が速い 一錠 2.5mg/35.9円
リウマトレックス ファイザー カプセル 吸収がやや遅い 一錠 2mg/231.8円
メトトレキサート・
メトレート
田辺・あゆみ 錠剤 吸収がはやい 一錠 2mg/149.5円
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