関節リウマチの治療を始めると、免疫を抑える薬(メトトレキサートなど)が始まることが多いと思います。
そして、そんな時、
関節リウマチになって治療を始めたけど、具体的に何を気をつければ良いんだろう?
と、思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな時に、心に留めておいてほしいことの一つが、ワクチンの予防接種です。
そもそも、ワクチンとは何かと言いますと、
『自分が病気(感染症)にかからない』
もしくは
『病気(感染症)にかかった場合でも症状が軽く済むようにする』
↑こちらのためのものになります。
例:インフルエンザのワクチンを予防接種することで、インフルエンザにかからないようにする。またはインフルエンザになった時、症状が軽くなる。
そして現在、日本で予防接種を認められているのは、以下になります。(2023年10月時点)
定期接種もしくは臨時接種 | |
生ワクチン | ■ BCG ■ 麻疹・風疹混合 (MR) ■ 麻 疹 (はしか) ■ 風 疹 ■ 水 痘 ■ ロタウイルス:1価,5価 |
不活化ワクチン トキソイド | ■ 百日咳・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオ混合 (DPT-IPV) ■ 百日咳・ジフテリア・破傷風混合 (DPT) ■ ポリオ (IPV) ■ ジフテリア・破傷風混合トキソイド (DT) ■ 日本脳炎 ■ 肺炎球菌 (13価結合型) ■ インフルエンザ菌b型 (Hib) ■ B型肝炎 ■ ヒトパピローマウイルス (HPV):2価,4価,9価 ■ インフルエンザ ■ 肺炎球菌 (23価莢膜ポリサッカライド) ■ 新型コロナ |
mRNAワクチン | ■ 新型コロナ |
任意接種 | |
生ワクチン | ■ 流行性耳下腺炎 (おたふくかぜ) ■ 黄 熱 ■ 帯状疱疹(水痘ワクチンを使用) |
不活化ワクチン トキソイド | ■ 破傷風トキソイド ■ 成人用ジフテリアトキソイド ■ A型肝炎 ■ 狂犬病 ■ 髄膜炎菌:4価 ■ 帯状疱疹 ■ 肺炎球菌 (15価結合型) |
(例:海外渡航の際、渡航先によって接種することが望ましい場合など)
種類が多すぎて、どれを受けたら良いのか分からない…。
確かにそうですね。
ワクチンの予防接種は、年齢やその時期の流行している感染症、もしくは医療現場などで求められている場合など、様々な場面で対応されます。
そして、関節リウマチ治療の場合、メトトレキサートなど免疫抑制剤を使っていることが多くあります。
そこでワクチンについて知っていただきたいことが、2点あります。
その1:どのワクチンを受ければ良いのか?
免疫が下がっている時に、一番心配になることは感染症です。肺炎や皮膚の病気などなど。
そのため、受けていただきたいワクチンはこちら。
- 肺炎球菌ワクチン(13価):プレベナー
- 肺炎球菌ワクチン(23価):ニューモバックス
- インフルエンザワクチン
- 帯状疱疹ワクチン:シングリックス
まず、肺炎の予防接種ワクチンについて。
肺炎球菌というのは、肺炎の原因になるウィルスのことで、ご覧の通り、その予防ワクチンは2つあります。
その違いは、と言いますと。
プレベナー | 13種類の原因ウィルスに対するワクチン。 生涯一度きり。 |
ニューモバックス | 23種類の原因ウィルスに対するワクチン。 5~6年に一度定期接種を推奨 |
これらの肺炎球菌のワクチンは、1つでももちろん効果はありますが、2つ受けることによって相乗効果を期待されるものになります。
接種する順番は、こちらがオススメです!
そして次に、インフルエンザ予防接種です。
インフルエンザって、毎年受けているから大丈夫でしょう?
と思われる方もいらっしゃると思いますが、もう一つ気をつけていただきたいことがありまして。
インフルエンザを発症した後、肺炎になることがあるため、こちらも重症化を防ぐ為に接種していただければ安心ですね。
最後に、帯状疱疹ワクチンについてですが、帯状疱疹に関しては、こちらをご参照ください。
帯状疱疹のワクチンと一緒に、知ってもらいたいことの2つ目をお話ししようと思います。
その2:『生ワクチン』と『不活化ワクチン』の違い
そもそも、この2つの違いはなにかといいますと、
- 生ワクチン:毒性を弱めたウィルスそのものを接種し、抗体を得るタイプ。
- 不活化ワクチン:毒性を無くして接種し、抗体を得るタイプ。
『生ワクチン』のタイプは、最初にお伝えしたように、風疹など、子どもの時に受ける予防接種が多くあります。
ただし、帯状疱疹のワクチンは、『生ワクチン(ビケン)』と『不活化ワクチン(シングリックス)』の2つのタイプが存在します。
ここが気をつけていただきたいポイントなのですが、
関節リウマチの治療中のように、免疫を抑えた状態の方が『生ワクチン』を接種すると、そのウィルスによる感染症にかかってしまうことがあります。
ですので、免疫抑制剤を内服している方が、どうしても『生ワクチン』の接種が必要な時は、治療を2〜3ヶ月ほど中断することが望ましいとされています。
関節リウマチ治療中で、帯状疱疹のワクチンを希望される方は、『不活化ワクチン(シングリックス)』を選択していただいた方が安心・安全です。
また、妊娠を希望される方は、風疹(生ワクチン)の予防接種をオススメされることが多いかと思います。
その時も同様に治療をお休みする必要がありますので、妊娠希望の方はご注意くださいね!
少し長くなりましたが、いかがでしたか?
もちろん、ワクチンを接種することで、副反応が出ることもあります。
ですので、予防接種は患者さんの希望に一任されます。
ただ、関節リウマチの治療を続けていくにあたって、感染症になりにくい(もしくは重症になりにくい)という安心材料が増えるということも確かです。
ぜひご検討してみてくださいねー!