抗CCP抗体について
抗CCP抗体は、関節リウマチの滑膜に存在するCCPという抗原を排除しようと形成される自己抗体です。
血液検査で検出することができ、リウマチを診断・治療するうえで重要な検査の1つです。
抗CCP抗体は今までのリウマチ因子検査よりはるかに鋭敏であり、正確にリウマチの発症を予測できる最も重要な血液検査です。
次のことがわかっています。
- 関節リウマチを発症した患者さんは、発症よりかなり前から抗CCP抗体陽性になることがわかっています。
- RF(リウマチ因子:関節リウマチをはじめ膠原病に関わる抗体)陽性かつ抗CCP抗体陽性のリウマチの場合、先手、先手の治療をして1日も早く関節の腫れを取らなければ短期間の間に変形が進んでしまうことが多くなります。
ですから、症状があり、抗CCP抗体が陽性である方は、変形の進行を防ぐために早期の治療が必要です。
抗CCP抗体陽性と治療の進め方
リウマチ早期診断・治療やMTXや生物学的製剤の投与のタイミングなどを解説した動画です。
抗CCP抗体陽性と
抗CCP抗体陰性の捉え方
抗CCP抗体陽性の場合を「正真正銘のリウマチ」、抗CCP抗体陰性の場合を言葉は悪いですが「中途半端なリウマチ」、またはリウマチ体質と呼んでいます。
「中途半端なリウマチ」は、痛みがあっても変形の進みが少ないです。
抗CCP抗体陽性の場合、
数年以内にリウマチ発症
抗CCP抗体が陽性だった場合、80%以上の確率で数年以内(数カ月~5年程度)に関節リウマチを発症することが分かっています。ほとんど症状のない段階から陽性になるので関節リウマチの発症予測に使うことができます。例えば、母親や兄弟に関節リウマチの患者さんが複数いらっしゃるなど、遺伝を心配される場合は、一度調べてみてもよいのではないでしょうか。
一方、RF陽性かつ抗CCP抗体陽性のリウマチの場合、先手、先手の治療をして1日も早く関節の腫れを取らなければ短期間の間に変形が進んでしまうことが多くなります。
現在のリウマチの治療は根本的な原因つまりリウマチになりやすい体質および遺伝子を変えることはできません。
治療がうまくいって痛みがなくなっても抗CCP抗体が陽性の方はやはり長期間、目安として10年20年以上陽性なことが普通です。
そのため寛解状態に持ち込んでも少しずつお薬を減らしていくとやはり症状が出てしまうことが多いのです。
そういう意味で抗CCP抗体が陽性の本物のリウマチの方は通院、投薬期間が10年20年と言う長期に及ぶ事は覚悟をしていただかねばなりません。
治療開始の目安
抗CCP抗体陽性の方が関節リウマチを発症した場合、早期に十分な治療をしないと、1-3年以内に関節の変形が重度に進行しやすいこともわかっています。エビデンス文献 #1#2
関節リウマチによる関節破壊(骨破壊)は、従来、上図グラフのようになだらかに進行すると考えられていましたが、実際には初期2年間で急激に進行することがわかってきました。
ですから、抗CCP抗体が高い方は、積極的に先手、先手を打って治療していくことが重要です。
無症状の場合
抗CCP抗体が陽性でも、全く無症状の患者さんに薬物治療をおこなうことは行なっていません。
世界的に使われているリウマチの分類基準(ACR/EULAR2010基準)というものがあります。
ほとんどの専門医がこれを目安に治療を開始していると思われます。非常によく考えられた基準なので、この基準を満たしてすぐに治療を開始すれば遅すぎるということはありません。
ただし、CRPなどが正常でも頸椎の滑膜炎病変や超音波やMRI検査などでしか見つけられない初期の炎症所見が見つかることもよくあります。
本当にリウマチが始まっていないのか、十分に精査して評価することが、適切な治療開始のタイミングを逃さないためには重要です。また、せっかく治療を開始しても、効果の不十分な薬のままで炎症が続くと関節の破壊が進んでしまうケースが多く見られます。
一度、リウマチ専門医にご相談ください。
抗CCP抗体の数値について
よくある質問
抗CCP抗体の数値と
リウマチの重症度は比例するのか
抗CCP抗体の数字は、リウマチの重症度とはっきり正比例するわけではありません。
たとえば本院の患者さんのなかで、高いかたですと、抗CCP抗体1,000以上のかたもちらほらいらっしゃいます。
最高5,000台という方もいます。
抗CCP抗体が例えば500だったとして、50の人の10倍悪いわけではありません。
ただし、数字の高さとリウマチの病気の勢いは( 重症度というよりは )おおまかに比例するといっていいでしょう。
抗CCP抗体4.5〜50前後で陽性の方と100以上の方を平均をとって比べると、100以上で高いグループの方がリウマチの勢いが強いことは間違いのないところです。
また、数字が高いかたは 治療期間も長期戦(5年から10年以上という単位)になる傾向があります。
本院では、リウマチが安定期にはいってほぼ緩解状態になると薬を減らせるかどうかの検討をします。そのタイミングで抗CCP抗体を測定して判断材料にしています。(1-3年に1回程度)
治療開始時の値より大幅に下がっていれば薬の減量が可能かなとか、あまり下がっていなければ減薬は慎重にといった使い方をします。
抗CCP抗体の数値は下がるのか
薬が効いて、リウマチが良くなると抗CCP抗体の数字も下がることが多いようです。抗CCP抗体を下げるには、しっかりとリウマチ治療をすることです。
実際に、関節症状が良くなり抗CCP抗体も下がったことで、生物学的製剤投与やMTXの服用のいらないドラッグフリー寛解に至っている方もいらっしゃいます。
ただし、抗CCP抗体というのは、リウマチ発症のかなり根っこに近い部分を表現しているため、実際の表面に出てくる症状とは必ずしも比例せず、良くなっていても数字が上がり続けるようなケースも見られます。ですから、必ずしも、リウマチの治療効果の判定に有用とは言えません。
いつでも計測できるのか
抗CCP抗体の血液検査はリウマチ診断後の保険診療では、生物学的製剤変更判断目的の測定のみ認められています。
文献引用
関節リウマチの寛解は可能か
―Ferdinand C.Breedveld APLAR 2010
エビデンス文献
もともと抗CCP抗体が陽性の場合、リウマチ発症後早期にレントゲン上骨破壊が見られ重症度が高い。
#1 Berglin E,Johansson T,Sundin U,et al:Radiological outcome in rheumatoid arthritis is predicted by presence of antibodiesagainst cyclic citrullinated peptide before and at disease onset,and by IgA-RF at disease onset.―
https://ard.bmj.com/content/65/4/453.short
抗CCP抗体の数値が高いほど、レントゲン写真上の評価で進行を確認。
#2 Syverrsen SW,Gaarder PI,Gokk GL,et al:High anti-CCP levels and an algorithm of four variables predict radiographic progression in patients with rheumatoid arthritis: results from a 10-year longitudinal study―
https://ard.bmj.com/content/67/2/212.abstract
Alessandri C,Bombardieri M,Papa N,et al:Decrease of anti-cyclic citrullinated peptide antibodies and rheumatoid factor following anti-TNFα therapy (infliximab) in rheumatoid arthritis is associated with clinical improvement―
https://ard.bmj.com/content/63/10/1218.abstract
Caramaschi P,Biasi D,Tonolli E,et al:Antibodies against cyclic citrullinated peptides in patients affected by rheumatoid arthritis before and after infliximab treatment―
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15726373/
De Rycke L,Verthlst X,Kruithof E,et al:Rheumatoid factor, but not anti-cyclic citrullinated peptide antibodies, is modulated by infliximab treatment in rheumatoid arthritis―
https://ard.bmj.com/content/64/2/299.abstract
van Dongen H et al.Arthritis Rheum 2007;56(5): 1424-1432 Efficacy of Methotrexate Treatment in Patients With ProbableRheumatoid Arthritis
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/art.22525
- 正式名
- 抗環状シトルリン化ペプチド抗体
- 略名
- 抗CCP抗体
- 英名
- Anti-cyclic citrullinated peptide antibody=ACPA
まず、正常値(単位)は4.5未満(U/mL)です。
これは、日本で採用されているほとんどの検査機関で共通している数字です。
(海外で調べた場合は基準値が異なることがあります)
日本人の抗CCP抗体陽性率
日本人の健常者の抗CCP抗体陽性率は1.3%
リウマチ因子陽性率は10%。かなり高いですね。
(人間ドックのデータより推定、聖路加国際病院の調査などによる)
引用元
https://hospital.luke.ac.jp/about/approach/pdf/ra23/1/research_activities_1_1.pdf
この聖路加病院の健康診断での人口層が一般人口を表すとなると抗CCP抗体の日本人での陽性率はおよそ1.3%になります。
検査を希望しない方は検査してないというバイアスが入っているので実際には1.3より実体は低いのではないでしょうか。
そうすると1パーセントというのが一番覚えやすいので100人で一人でいいと思いますね。
リウマチの男女比の罹患数で考えると、女性はだいたい男性の4倍なので男性が200人に1人の0.5パーセント。
女性が50人に1人の2パーセント。
そうすると合計400人に5人の1.25%になり計算としては妥当ではないでしょうか。