安全に妊娠・出産をするためには
準備が必要です
妊娠・出産を考える場合の
リウマチ治療
本院の基本モデル
- リウマチを短期間で徹底的に治療して痛みをゼロにする。(寛解)
- 安心して、子作り、子育てができるレベルにまずもっていく。
- これ以上変形が進まないという安心感を持って、MTX投与中であれば中止し3カ月以上おいて子作りにチャレンジ。
不安と痛みを抱えたままでは、とても子作りや子育てどころではないからです。
- 寛解までの目安となる期間はおよそ6か月です。
挙児希望の患者さんは、診察時必ず医師に申し出てください。
(男性も女性も)
また、リウマチ治療中に妊娠がわかった場合は、その時点で医師にご相談ください。
妊娠とリウマチ薬について
リウマチ治療で使用する服用薬と注射薬の妊娠に関わる危険度
妊娠中のリウマチ治療薬MTXの内服は禁忌です。
米国食品医薬品局の基準
薬剤名 | 危険度 |
非ステロイド系消炎鎮痛剤 (ロキソニン・ボルタレン・モービックなど) |
C (危険性を否定できない) |
MTX (リウマトレックス・メトトレキサート) |
X (禁忌) |
プレドニンなど 副腎皮質ステロイド剤 |
C (危険性を否定できない) |
注射生物製剤 (インフリキシマブ・エタネルセプト) |
B (ほぼ安全) |
NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)
催奇形性の心配はほぼありませんが、特に妊娠後期(6か月以後)に大量に服用すると分娩開始の遅れ、動脈管の早期閉鎖、胎児黄疸、脳障害などの恐れがある。
妊娠中の解熱・鎮痛薬の服用は、出来るだけ控えるようにします。
妊娠初期に数回頓服する程度でしたら、それほど心配いりません。
授乳中は常用量でしたら問題ありません。
MTX(リウマトレックス・
メトトレキサート)
明らかな催奇形性がありますが、中止後3か月間避妊期間をおけば、妊娠に影響ありません。授乳中も使用できません。
詳細ページ:MTX内服中の避妊についてp>
プレドニン プレドニゾロン
今までは妊娠時のリウマチコントロール基本薬剤と考えられていました。基本的に問題ないとされていますが、動物実験で、催奇形性の可能性が報告されています。また、血圧上昇、むくみ、高脂血症、骨粗鬆症などの副作用があります。
これらステロイドの副作用は、妊娠中毒症など妊娠時特有の合併症と合致しており、その危険性を助長する可能性があるのではないかと当然予測されます。
インフリキシマブ・エタネルセプト
これまで、世界中の使用実績で流産・異常出産(奇形)が増えたとの報告はありません。100%の保障はありませんが、ほぼ安全な薬剤と考えています。
妊娠を検討中の
リウマチ患者さんへ
リウマチの痛みがコントロールできないままだと、妊娠しにくくなる可能性や、胎児の発育に影響する可能性が指摘されています。
実際のところ、痛みが続いている状態だと、先々どうなるのだろうかという不安で子作りどころではないのではないでしょうか。
痛みや腫れがなければ、不妊に影響せず、妊娠中も低疾患活動性を維持できると報告されています。
妊娠中も使用可能な薬剤でリウマチを十分にコントロールしてから余裕を持って妊娠を計画することが望ましいと思います。
妊娠を希望される患者さんは、寛解を目指してしっかり治療をしましょう。
妊娠していることがわかった場合
(尿検査などで)
すぐに相談しにきてください。
- お薬をこれからどうするか。
- 流産しないためにはどんなことに気をつけたらいいか
など、出産・授乳・子育てまでみこしたベストな治療計画を一緒にたてていきましょう。
同じ女性という立場で、いろいろなアドバイスができると思います。
妊娠がわかった場合のリウマチのお薬
症状が十分にコントロールされていれば、妊娠中も低疾患活動性が維持できる可能性が高いので、一旦薬剤を中止することを考えてみましょう。
リウマチの勢いが強い場合は、胎児の発育への影響が心配されるため、妊娠中も薬剤を継続する場合があります。
胎児への曝露を防ぐため、妊娠後期(妊娠第3期=28週以降)には生物学的製剤の投与を控えることが推奨されています。
ただし、この場合も、疾患活動性が高い場合は生物学的製剤の使用継続が検討されます。
妊娠中のバイオ製剤(生物学的製剤)について
本院では、胎盤移行性の低い生物学的製剤 エタネルセプト(エンブレル・エタネルセプトBS)またはシムジア(セルトリズマブ)を使われるかたがほとんどです。
新生児のワクチン接種について
妊娠後期(28週以降)に生物学的製剤を使用した場合は、新生児が生物学的製剤に曝露されて、ワクチン接種によって影響が出た症例が報告されています。
妊娠後期に生物学的製剤を使用した場合は、新生児への生ワクチン接種 (ロタウイルス、BCG、MR:麻しん風しん混合、おたふくかぜ、みずぼうそうなど) は生後6か月以降に延期するようにしましょう。
その他の普通のワクチンは通常通りのスケジュールでうけてかまいません。