関節リウマチにおける血液検査の役割
関節リウマチにおける血液検査は、早期診断から治療の安全管理に至るまで、一貫して重要な役割を果たします。診断や病気の活動性、治療効果や副作用の確認においても重要な役割を担っています。
抗CCP抗体・RF・CRPはリウマチで重要な血液検査
特に初期段階では、症状だけでの診断が難しいことが多く、抗CCP抗体やRFなどの自己抗体が早期発見に大いに貢献します。さらに、CRPは炎症の強さを示し、病気の活動性を把握するための指標となります。
治療開始後は、薬の効果を確認しつつ、肝機能、腎機能、血球数を定期的にチェックすることで、副作用を早期に発見し、安全に治療を続けることが可能です。
血液検査はリウマチ治療の基盤となる重要な情報源です。
リウマチ因子 RFの見方
(Rheumatoid Factor= RF リウマトイドファクター)
RF数値:当院の正常値は15mg/dl以下です。
正常人でも1-5%で陽性になります。リウマチの方でも5%の方は陰性です。あくまでも目安ですが、この数字とリウマチの重症度はかなり比例しています。
数字が高いほど、重症になりやすい。つまり、関節の変形が進みやすい傾向が強くあります。薬が効いてくると、この数字もある程度下がってきます。高い場合は、治療とともに低くなることが多いですが、正常化しなくても心配いりません。
リウマチ因子が表すもの
病気の中には、白黒の診断がつきにくいものがありますが、リウマチも同じことが言えます。リウマチが発症する前の段階を「リウマチ体質」と呼んで説明しています。リウマチ因子が高いほどリウマチ体質であり、比例関係にあります。リウマチ因子が20~30であれば腱鞘レベルの低いリウマチ体質、200~300であればいずれ真のリウマチを発症する可能性が高いということになります。
また、リウマチ因子は治療の過程でも役に立ちます。例えば、熱の症状が風邪なのか、それともリウマチによる一時的な悪化であるリウマチフレアなのかを判断する目安として、リウマチ因子を利用することができるのです。また、リウマチ因子は、関節リウマチの治療前と治療後、痛みの有無で数値が動くので、把握しやすいという特徴があります。
リウマチ体質について説明した動画です。
CRP(mg/dl)の見方
リウマチの勢い=炎症の強さを表す最も大事な検査値です。血沈とほぼ同じ意味合いですがより正確です。
当院での正常値は0.45以下。
リウマチでは症状の程度によって0.5から10以上まで上がります。
(ただ風邪などでも高く出るので注意が必要です。)
コントロールの目標はずっと0.5以下におさえていくことです。
これを0.5以下に保つのと高いままにしておくのとでは毎日の苦痛が全然違うし、数年後の変形の程度に大きな差が出ます。つまり、薬でリウマチの勢いを抑えていけば、かなりの手術をしなくてもすむようになるわけです。
効果のある薬を十分な量を使えば80%のかたはこの数字が達成できます。
ただ炎症の勢いが非常に強い方はとりあえず1.0以下におさまっていれば合格と思ってください。リウマチの症状と検査値は必ずしも比例しません。
数字より痛み、腫れの程度がより大事です。
抗CCP抗体の見方
抗CCP抗体は、今までのリウマチ因子検査よりはるかに鋭敏であり、正確にリウマチの発症を予測できる検査です。
早期リウマチに対する診断確定度も高く、他の検査でリウマチかどうか診断がつかない場合や現時点でリウマチ診断基準に満たない症状の患者さんでも、この抗CCP抗体で陽性であれば、リウマチであるという可能性は高くなります。
もし、抗CCP抗体が陽性で、関節症状がある一定期間続くようであれば、MTXを投与して、本格的な関節リウマチへの移行を未然に防ぐことが、本院の方針になっています。
抗核抗体 ANAの見方
リウマチ患者の20-30%で陽性になります。
ただし、健康な人でも4%(女性ではさらに高率)が陽性、高齢者では健康な人でも30%も陽性に出ますから、あくまでも大雑把な検査です。診断をするうえでの参考程度に使います。
もっともよくみられる誤りは、抗核抗体陽性=SLEや全身性硬化症などのリウマチ以外の特殊な膠原病(難病)という思い込みです。
確かに、これらの膠原病も、最初はリウマチのような関節痛で発症し、リウマチと区別がつきにくいことがありますが、頻度的には、リウマチのほうが圧倒的に多いのです。
ただし、最初は、関節症状が主体でもほかの膠原病が徐々に姿を現してくるというようなパターンもあります。蛋白尿・血尿・リンパ球数・肺の間質性変化、皮膚症状などに気をつけながら治療していくことが必要です。
MMP-3の見方
MMP-3は関節の炎症の程度を表す検査で、リウマチ以外の変形性関節症などでも若干上がります。リウマチの治療中、通常はCRPで炎症の評価をします。
若干、検査料も高いので毎回検査する必要はないと思います。
ただし、例えばトシリズマブ(アクテムラ)などの使用中は痛みが取れていなくてもCRPが正常化してしまい、実際の炎症コントロールが判断できなくなります。MMP-3を参考のため、時々検査します。
血球 WBC RBC Hb Ht Plt
薬の副作用で減っていないかをみています。
リウマチが悪いと貧血(赤血球が少ない)になることがあります。
肝臓 ALT AST
薬の副作用が起こっていないか。多くの薬の中止で落ち着きます。
MTXや結核の予防薬を飲んでいるときは、少しの肝臓の数値が上がっても注意しながら薬を使い続けることがあります。
腎臓 BUN Cre
痛み止めの飲み過ぎや水分不足で数値が悪くなることがあります。
カビの感染 βDグルカン
カビによる肺炎を起こしたときなどに高くなります。
弱陽性は問題ありません。
肺の炎症 KL-6
リウマチ性間質性肺炎や薬による肺障害で高くなることがあります。
※毎回すべての項目を検査するわけではありません。薬の種類、量や状態に応じて適宜検査をします。
リウマチかどうかの採血以外に感染症がないかの検査も大事です。
日本人に多い感染症を持っていないかチェックします。
リウマチの治療を始めたあとに、潜んでいた感染症が発症する方が稀にいらっしゃるからです。
あらかじめチェックすれば、対策が立てられます。
特に気をつけるのは、結核と肝炎です。
結核
ご本人または家族が、結核・肋膜炎・肺浸潤などと言われた方は教えてください。
確認のために、肺のレントゲンとツベルクリン反応を確認します。
ウィルス性肝炎
(B型肝炎・C型肝炎)
日本人の60歳以上の3割は気付かずにウィルス性肝炎に感染したことがあるという報告もあります。採血でチェックができます。
今まで肝炎と言われたことがある方は教えてください。
より詳しい採血をします。
関節リウマチと
診断されてから
定期的な血液検査
治療の効果と炎症の程度をみるため CRPをみます。また、薬が効いてくるとリウマチ因子(RF)も下がってくることが多いのでこれも参考にします。
副作用チェックのため10週ごと(リウマチ治療経験のない方は当初8週ごと)に、血液像、肝機能、腎機能をチェックします。
もっとも重要な副作用は白血球の減少です。
リウマチ発症当初は、白血球数が高いことが多いのですが、薬が効いて炎症が治まってくると、徐々に減ってきます。
とくにお年寄りは注意が必要です。
血液検査の頻度
リウマチの薬(特にMTX)を内服している方は、必ず指示通りに採血のチェックを受けてください。
- 抗リウマチ剤開始後1年間は8週おき
- 1年以上経って安定したら10週おき
血液検査に出ないリウマチ
「抗体の産生が難しい」方、「抗CCP抗体やRF以外の免疫異常の可能性がある」方などが一定数存在します。(関節リウマチ患者さんの10-20%、とくに高齢者)
身体的な症状としては、関節の腫れや痛み、朝のこわばりなど、関節リウマチに典型的な症状や所見が見られる方でも、血液検査で陽性判定が出ない場合があります。しかし、関節の腫れなどの身体的症状や関節エコー検査による炎症の確認を通じて、「関節に炎症があるかどうか」を総合的に診断することが可能ですので、リウマチ専門医にご相談ください。
